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「辞めたけど良い会社ランキング」で特許庁が4位!?

「グーグルやP&Gジャパンを抑え、特許庁、『辞めたけど良い会社ランキング』で4位 ”眠らない霞が関”で唯一評価されるには理由があった」(ITmediaビジネスオンライン 2022.11.24)という記事がありました。

openwork働きがい研究所が、ネットの口コミから退職者が退職した会社をどのように評価したかを調査・分析したレポートのようです。霞が関の官庁でありながら4位にランクインした特許庁は驚きをもって迎え入れられているようです。

記事では、特許庁について「個人の裁量で仕事できること」「男女ともにフラットで自由闊達な組織風土」「育休や産休が取得しやすく、復職もしやすい組織」などが支持を集めた理由であると分析しています。

実は、これは特許庁という役所の特質から来ているといえます。記事にも「審査官」という言葉が何度も出てきますが、これは文字通り、出願された特許や商標を登録してよいかどうかを審査する専門官です。

特許などの審査では公平性・中立性が大切です。そのため、裁判官などと同様に、審査官はひとりひとりが独立した機関と位置付けられています。その出願を登録してよいかどうかは、原則、審査官が公平・中立を守りつつ、かつ、独自に判断するものであって他の審査官の影響は受けません。

そのため、働き方においても他人に指図されることもなく自分のペースで仕事ができ自由度が高いです。一方、その分、個人の責任が重くなるともいえます。

では、特許庁の審査官が独立機関であることから、審査の現場ではどのようなことが予想されるでしょう。それは、担当する審査官によって登録が認められたり、認められなかったりすることが起こり得るということです。

最近では、あまり聞かなくなった話ですが、ひと昔前は、一筋縄ではいかないこだわりの強い審査官がいたことは事実です。

近年では、特許庁も審査の質の均一化に注力していることもあって、目立ってそのようなことは無くなりましたが、それでも、審査官によって判断が分かれることはあるでしょう。

「弁理士さんは、特許になるかどうか断言してくれない」といった声はよく耳にしますが、このように審査官次第といった制度である以上、ご容赦いただかざるを得ないところです。

しかし、「辞めたけど良い会社ランキング」で特許庁が4位ということは、独立性の高い審査官のような働き方が昨今求められる理想に近いということなのでしょう。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2022年11月号」から転載)